Souled American「FE」

シカゴ*1のルーツロック寄りアヴァンロックバンド(いや違うなぁ)Souled Americanの1枚目。リリースはRough Tradeでした。
語彙は、カントリーやカントリーフォークを主としたルーツサウンドからとっているのだが、演奏面での違和感がちりばめられている(ピックでのゴリっとしたポストパンク風のベースの奏法やリズムの感覚か)。リズムはスロウからミディアム。この録音のときは4人で、むさいヴォーカル/コーラスにハープ、ギター2本/ベース/ドラムという楽器編成。基本的に、ソングライターのJoe Anducci(b,vo)とChris Grigoroff(g,vo)が中心のグループと思う。80年代後半から90年代前半。
初期The Band的な、折衷、リズムの歪みが強く感じられる。曲想はややユーモラスなもので、現在で一番近いサウンドは、The Gourds、か。The Band + Pere Ubuってのはキャッチとしてどうか。
ふつうに、インディーなルーツロックとして聴くことが可能だが、ルーツロックを聴きこんだひとには、違和感がじわじわ効いてくる。が、それが快感にも。
1枚目のサウンドを継承して、2枚目3枚目とややフォーク寄りのスタンスに微妙に変化しながらも、リリースしてきたが、4枚目のトラッドのカヴァーを多く含む「Sonny」で、特にインスト部分でより(本来の意味での)アルタナティヴな指向が強くなる。それは、音の出ていない隙間で表される。またリズムの歪みも強調され、Captain Beefheartのバンドのように響く瞬間もある。
そして、5枚目6枚目では、リズムもなく、すさまじく引き伸ばされた演奏と、それより多い残響と無音の空間が呆然と提示されているだけになる。
あなたが、ドローンコアを嗜好するようなひとなら、後期からきいてもいいだろう。もし、回帰的な指向ばかり強調された00年近辺のルーツロックに飽き飽きし、よりルーツロックの周辺領域との接点について興味を持ち始めたら、中期までのSouled Americanのどれか1枚を入手してみることは、決して損にはならない。
でも、まあ、まず手に入らないよ。とほほ。西のCamper Van Beethoven、東のSouled Americanっていったのは誰だったか(Souled Americanが注目を集めたきっかけはCVBのツアー参加あたりだったはず)。アマゾンにもないから、商品紹介もなし。
http://www.souledamerican.com/
なお、ドラムのJamey Barnardは4枚目で脱退(以後ドラムレス)、さらにギタリストのScott Tumaが99年ごろ最近作リリースあとに脱退している。以来リリースがないが、正式な解散の発表はきいたことがない。

*1:結成はオースティンだと。これは知らなかった